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不動産投資の楽待

住宅トラブル、ズバリ解決!

大谷昭二 大谷 昭二(おおたに しょうじ)
日本住宅性能検査協会によって設立されたADR(裁判外紛争解決)センター、「日本不動産仲裁機構」を運営する大谷氏が、不動産取引・施工・敷金問題など、住宅にまつわるトラブルの実例を紹介し、その解決策を明快に解説いたします。
第3回 欠陥住宅 損害賠償額はいくら?
公開日 2009/3/19
中古住宅の売買で重大な欠陥が見つかり
その損害賠償額は建物代金相当額のみとした判決
Q. 瑕疵〔カシ〕がある建物で売買契約を結んでしまいました。いくらの損害賠償金額が可能でしょうか?

A. 建物の売買で、買主が建物の瑕疵を理由として損害賠償額として認められたのは瑕疵担保責任に基づき建物代金相当額についてのみ認容されました。転居費用、仮住費用、調査費用は否定されました。(東京地裁平成14年1月10日判決)
 
判決内容
【建物プロフィール】
木・鉄筋コンクリート造スレート葺3階建て住宅

【入手経路】
中古住宅売買契約(代金は土地・建物を合わせて3200万円)

【相手方】
売主

【法律構成】
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求

【判決の結論】
瑕疵担保責任に基づき建物代金相当額について損害賠償請求を認容。転居費用、仮住費用、調査費用は否定。
請求額⇒1512万円
認容額⇒1282万円

【認定された欠陥】
原告主張の欠陥をすべて認定
1.地盤の不動沈下・基礎構造の欠陥
2.壁量不足
3.火打ち材の欠落
4.アンカーボルトの欠落
5.雨漏り・白蟻被害による部材の腐蝕

【コメント】
1.中古住宅の売買契約の事案(代金は土地・建物を合わせて3200万円)で、解体・再築以外に補修することが困難な欠陥の存在を認めつつも、建物代金額(1282万円)を損害賠償額の上限とした判決です。

(1)民法570条の損害賠償の範囲は信頼利益に限定されますが、「売買代金と売買時に客観的取引価格との差額は信頼利益に属する」としたうえで、
(2)本件建物の売買価格は代金額から土地代金分(近隣実勢価格から算出)を控除した1282万円であり、この売買価格の損害賠償を認めました。

2.原告は、主体的請求において、

(1)取り壊し立替費用相当損害金に付き上記1282万円を上限として建物瑕疵の損害を計上したほか(新築建物取得を回避)、
(2)調査鑑定費用、
(3)仮住まい費用,
(4)引越費用をも請求しましたが、

判決では「瑕疵ある目的物の価格が責任の上限となる」として(2)〜(4)は否定されています。

3.担保責任における損害賠償を「信頼利益」ととらえ、目的物自体に関する損害賠償を対価の限度に制限する考え方です。

4.なお、本件においては、地盤(擁壁)自体に欠陥が存することから、土地代金に食い込んだ損害賠償請求、あるいは、契約解除も可能な事案であるようにも思われます。

裁判所 建物種類 欠陥内容
(判決日)
東京地裁
判決平成14年1月10日
木・RC造3階建て
中古売買 3200万円

・地盤の不動沈下・基礎構造の欠陥
・壁量不足
・火打ち材の欠落
・アンカーボルトの欠落
・雨漏り・白蟻被害による部材の腐蝕
解体再築 転居費用 仮住費用 調査鑑定費用 合計(万円)
1282/1282 0/60 0/135 0/35 1282/1512
 
用語解説

●売主の瑕疵担保責任
民法570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

【解説】
民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

【意義】
売買契約の売主には瑕疵のない目的物を引き渡す義務があるから、瑕疵のある物の引渡しは債務不履行であり、したがって570条は債務不履行責任についての特則であると考える。

【隠れた瑕疵】
「隠れた」とは、買主が瑕疵の存在について善意・無過失であることを意味すると解されている。また、何をもって「瑕疵」とするかは、契約の目的によって異なる。

【行使期間】
本条が準用する566条3項によって、瑕疵担保責任が追及できる期間は、買主が瑕疵を知ったときから1年間に制限されている。

【効果】
瑕疵担保責任を追及する場合、買主は損害賠償請求ができる。また、瑕疵のために目的を達することができないときは、契約の解除をすることができる(566条1項の準用)。

契約責任説によれば、瑕疵担保責任は債務不履行責任の特則であると考えられるから、買主は損害賠償請求権・解除権のみならず、契約の効果としての完全な履行を請求する権利があるとされる。すなわち、瑕疵の修補を請求し、あるいは代物を請求する権利もあるとされる。

●履行利益・信頼利益
債務者が契約に関して損害賠償請求をするにつき、どんな利益が害されたかを問題とする場合の区別。

契約が約定どおり履行されれば債権者が得たであろう利益、例えば利用とか転売による利益等を履行利益といい、無効の契約を有効と信頼したために失った利益、例えば有効な土地の売買契約と信頼して土地を見に行った費用とか、ここに建築するため用意した資材等を信頼利益という。

この区分はドイツ民法にならうものであり、わが民法にはこのような区分はないが、一般的には債務不履行による損害賠償は履行利益のみが対象となり、信頼利益は、いわゆる契約締結上の過失のような場合に限られると解されている。

バックナンバー
第1回 瑕疵担保責任 契約解除は可能か?
第2回 シックハウス 契約解除は可能か?
第3回 欠陥住宅 損害賠償額はいくら?
第4回 瑕疵担保責任が認められる期間は?
第5回 居住者に配慮しない設計・施工への瑕疵担保責任
第6回 屋根裏物置を階とみるか否か
第7回 標準的技術基準を守らなくても違法とはいえない!?
第8回 建物建築業者の地盤調査義務
第9回 えっ!コウモリが? 思わぬ住宅トラブルに
第10回 解体再築の必要あり!
第11回 南向きだと思ってたのに!?
第12回 大量のアリは瑕疵になる?
第13回 輸入住宅の欠陥はどうなる?

大谷 昭二 大谷 昭二(おおたに しょうじ)
■プロフィール
NPO法人日本住宅性能検査協会の理事長。弁護士・一級建築士等30名の陣容でADRセンター「日本不動産仲裁機構」を運営。現在、週刊紙「週刊ビル経営」で【仲裁事案】を連載中。又、仲裁ADR法学会理事、ガーソン・レーマン・グループのカウンシルメンバーでもあります。
日本住宅性能検査協会のホームページはこちら

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