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不動産投資の楽待

誰にでもわかる不動産市況

田村 修 田村 修(たむら おさむ)
株式会社不動産経済研究所、日刊不動産経済通信編集長の田村氏が、最近の不動産業界の現状や今後の見通しなどを、一般の方々にも分かりやすくお伝えします。
第8回 これからの住宅政策のあり方とは?
公開日 2009/10/2
今回は住宅政策を取り上げます。政権交代を実現した鳩山新政権が掲げている「脱官僚依存・政治主導」の姿勢はどのような住宅政策を打ち出すのでしょうか。住宅政策を所管する国土交通省では、ダムや道路建設をはじめとする公共事業問題がやり玉に挙がっていますが、住宅政策もこれまでは公共事業的な色彩が強くでていました。戦後の住宅政策はつい最近まで、量の絶対的な不足を解消するための公的住宅の供給と国民が持家を取得するための公的金融支援の充実という2点に集約されてきました。

しかし、住宅不足が解消され、「量から質へ」をスローガンとした政策転換のもと、2006年に住生活基本法という法律が施行され、計画的に新規の住宅を供給することを柱に据えてきた従来の政策から、既にある住宅ストックを有効活用していくことに重点を置いた政策に変わりました。この政策の流れを民主党連立政権はさらに固めて、実効性のあるものにしていこうとしています。
 
民主党が掲げるのは「住宅政策の転換」
新政権が打ち出す住宅政策の詳細はまだわかりません。しかし、民主党はマニフェストで「環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する」と謳っていて、政策目的に「住宅政策を転換」と明言しています。具体的に力を注ぐのはリフォーム、中古住宅、賃貸住宅です。これらは新築の持家取得支援を最重点としてきた従来の住宅政策では、ほとんどインセンティブを与えられなかった政策メニューです。

新しい政策が定着し、社会に効力を発揮するようになるには多少時間がかかります。政策の転換が経済に与える影響は無視できません。新たな住宅を供給している住宅・不動産業界にとって、住宅政策は生殺与奪の権を握っていますから、政策転換がとりわけデベロッパーや住宅市場に与える影響は大きくなります。
 
いま起きているのは不況による供給調整
住宅政策を転換する嚆矢となった住宅基本法が施行されたのは今から3年前ですから、すでに住宅・不動産業界や住宅市場にその影響が及んでいるはずです。ところが実際は、2007年までは景気も良く、分譲マンションをはじめとする不動産市況が好調だったため、住宅市場は新築住宅の供給を中心に推移しました。

結果的には、建物の構造計算などが複雑になった改正建築基準法が2007年6月末に施行されたことと、販売価格の上昇でマンション市況が悪化しはじめ、昨年のリーマン・ショックによる世界的金融危機の影響を受けた不動産不況によって、マンションをはじめとする新築住宅の供給が激減しました。政策転換による構造変化ではなく、不況による供給調整が起きているのが現状です。
 
数字の上では760万戸の住宅が余っている
政策転換は本来、消費者のニーズに合致していなければなりません。新築の持家住宅を取得したいというのが消費者ニーズの大勢を占めるのであれば、そのためのインセンティブを政策に盛り込むべきです。日本人は新築住宅が好きです。それは魅力的な既存住宅のストックが乏しいことも大きな要因です。

総務省が今年7月に発表した「平成20年住宅・土地統計調査速報集計結果」によると、08年10月1日現在の総住宅数は5759万戸です。総世帯数は4999万世帯ですから、単純に計算すると総住宅数は総世帯数を760万戸も上回っていることになります。年間の住宅着工戸数を110万戸とすると、7年分の住宅が余っている計算です。数字の上からは新しい住宅をつくる必要はありません。ただ実際は消費者のニーズに合致した住宅のストックが不足しているため、新築住宅に対するニーズがなくならないのです。
 
再開発や建替えでストックの再生を
新築住宅をどんどん建てていけば、余った住宅がさらに増えていきます。やはり既存の住宅ストックを有効に活用していくことが、余剰住宅を減らすという観点からも重要な政策であることは間違いありません。そのためには、消費者ニーズを満たすストックにつくり替えていく必要があります。量を充足させることを主眼とし、ボリュームゾーンである家族向けのプランを大量に積み上げてきたこれまでの住宅ストックを、単身者や共働き夫婦、高齢者向けなど、多種多様なニーズに対応できるように再生していくことがこれからの住宅政策に求められています。

民主党が掲げているリフォーム、中古住宅の普及策はもちろん重要ですが、ストックを再生するためには大規模な再開発や建替えを促進していくしかありません。バリアフリーや省エネへの対応はリフォームで可能ですが、老朽化したマンションや十分な耐震性能を満たしていない住宅、天井高の低い住戸など、構造躯体そのものに手を入れなければならないストックはリフォームやリノベーションだけでは再生できません。
 
減税策は川上と川下の双方に必要
住宅政策の大きなツールが税制です。現在の住宅ローン減税や相続税の特例などは時限措置ですが、住宅の取得を支援するための減税制度は恒久化するべきです。民主党は消費者重視の姿勢を強く打ち出していますから、従来よりも消費者が不利になるような制度改正は行わないでしょう。住宅減税については引続き、手厚いインセンティブが期待できると思います。

問題は川上である事業者側への減税措置です。川下である消費者だけへの減税では住宅政策に厚みはでません。川上がしっかり機能しなければ、川下も恩恵が受けられないのです。欧米と違って、日本には優良な住宅ストックが圧倒的に不足しています。確かに日本はこれから人口減少社会に突入していきますから、これまでのような量を追う新築住宅中心の住宅政策は転換すべきです。しかし、優良なストックを形成するための新築住宅の供給促進策は、むしろこれからが本番かもしれません。

バックナンバー
第1回 なぜ、不動産は不況に陥ったか?
第2回 首都圏を中心としたマンション市況の現状
第3回 マンションブームの背景
第4回 マンションの商品性 その進化と変遷
第5回 マンション市況と今後の見通し
第6回 新築マンションの減少が及ぼす影響
第7回 社会構造と経済環境の変化に伴う今後の分譲マンション市場
第8回 これからの住宅政策のあり方とは?
第9回 マンション市況の最新動向と回復の見通し
第10回 この1年をふり返って、そして来年の展望

>>楽待コラム第二弾「日刊不動産経済通信 田村編集長の最新不動産市況」はこちら

田村 修 田村 修(たむら おさむ)
■プロフィール
出版社勤務などを経て、1985年4月に株式会社不動産経済研究所に入社。
不動産業界唯一の日刊紙である『日刊不動産経済通信』の記者として、不動産関連業界を取材。大手ハウスメーカーやゼネコン、総合不動産会社、不動産流通会社、マンションデベロッパー、Jリート、国土交通省などを担当。
2008年2月から『日刊不動産経済通信』編集長。
株式会社不動産経済研究所のホームページはこちら

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